2020.05.26更新

子宮内膜は子宮の中の腔(空間)を覆っており、月経周期に伴って分厚く増殖し、月経の際に剥がれ落ちるというサイクルを繰り返しています。

子宮内膜増殖症とは、子宮内膜が異常に厚く増殖した状態を指します。

場合により子宮体がんの発生原因となったり、あるいは子宮体がんが隠れていたりする場合もあり、注意が必要な疾患です。

 
●原因
子宮内膜の変化には女性ホルモンが関与していますが、子宮内膜の増殖作用があるエストロゲンがさまざまな要因により過剰な状態になることで生じます。

エストロゲンが過剰な状態となる原因としては無排卵、エストロゲンを主成分とするホルモン剤を内服している場合、月経周期の後半で作用するプロゲステロン(排卵後に作用する女性ホルモン)の分泌が少ない状態 (黄体機能不全)、多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群などが挙げられます。

また、肥満や高血圧、糖尿病なども子宮内膜増殖症になるリスクが高いとされています。

さらに子宮内膜の過剰な増殖状態が続くことで、内膜を構成する細胞の遺伝子に傷が蓄積し、正常でない状態 (異型細胞と呼ばれます)となることが知られており、異型細胞が増殖を繰り返すことで子宮体がんの発生母地(前がん病変)となる場合があります。

子宮内膜増殖症は子宮内膜を構成する細胞の異型の有無に応じて2つに分類され、細胞に異型のない場合は「子宮内膜増殖症」、細胞に異型がある場合は「子宮内膜異型増殖症」と呼びます。

「子宮内膜増殖症」は、癌化率が2%程度と低いですが、「子宮内膜異型増殖症」は癌化率が20%程度と高いことが知られています。
 
●症状
最も多い症状は不正性器出血で、月経でないのに出血がある状態を指します。

その他、月経時に増殖し厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちることによって、通常より月経量が増え(過多月経)、これにより貧血や動悸(どうき)などの症状がみられることがあります。
 
●検査・診断
不正性器出血などの症状がみられた場合、下記のような検査が行われます。

・問診
・内診
・超音波検査
・画像検査 (MRIやCT検査など)
・病理検査 (細胞診や組織診)
・血液検査
・内診
・内診によりおりものの性状、出血の程度、出血が子宮から出ているかどうかを確認します。

また、子宮、卵巣の形や大きさなどについても評価します。

●超音波検査
超音波が出る棒状の器具を腟から挿入し子宮内膜の厚さや状態を確認します。

●病理検査 (細胞診、組織診)
細胞診は専用のブラシやチューブのような器具を腟から入れて子宮の奥にある細胞を採取し顕微鏡で調べます。

また組織診は子宮内の組織の一部を器具で引っ掻いたり吸引したりして採取した組織を顕微鏡で調べます。

どちらの検査も痛みや出血を伴うことがあります。

これらの検査により子宮内膜の増殖が確認されると診断が確定します。

●画像検査
子宮や卵巣の状態によっては超音波検査に加えて、子宮や卵巣の状態をさらに評価するため、MRIやCTによる画像評価を行う場合があります。

●血液検査
月経時の出血が多い場合や動悸などの症状がある場合には貧血がないか血液検査を行う場合があります。

またホルモン量の評価も行う場合があります。
 
●治療
治療は細胞の異型の有無(「子宮内膜増殖症」か「子宮内膜異型増殖症」か)に応じて大きく異なります。

その上で年齢や妊娠・出産の希望の有無を加味して個別に検討がなされます。

●「子宮内膜増殖症」の場合
細胞の異型がない子宮内膜増殖症は60%以上が自然に治るため、治療を行わずに経過観察することが一般的です。

定期的に外来で診察を行い、超音波検査や病理検査(細胞診、または組織診)により子宮内膜増殖症の経過を評価していきます。

性器出血が持続する場合やそれによる貧血が強い場合などにホルモン剤を用いた治療が行われることもあります。

●「子宮内膜異型増殖症」の場合
まずは子宮体がんがないか調べることが重要です。

このために麻酔を行なった上で子宮内膜全体を削り取る「子宮内膜全面掻爬(そうは)」と呼ばれる処置を行います。

病理検査で子宮体がんがないことを確認した上で子宮内膜異型増殖症の治療へ進みます。

子宮内膜異型増殖症の治療では、子宮を取り除く手術 (子宮全摘出術)を行うのが一般的です。

ただし妊娠の希望がある場合には、状況に応じて子宮を摘出せずに高用量の黄体ホルモン剤 (メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA))の投与を行う場合や、検査と治療を兼ねて定期的に子宮内膜全面掻爬を行う場合があります。
 

投稿者: 高橋整骨院

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