2020.09.17更新

軟産道強靭とは、赤ちゃんの通り道である産道のうち軟産道と呼ばれる部分が非常に硬く、赤ちゃんの移動を妨げてしまう場合を指します。

産道には骨産道(骨盤など骨で構成されている部分)と軟産道(筋肉や腟など軟らかい組織で構成されている部分)の2種類があります。どちらも出産の進み方や難産になるかなどに大きく関わってきますが、骨産道はほとんど形が変わらないのに比べ、軟産道は広がりやすいという特徴があります。

分娩中に赤ちゃんがおりてくるにしたがって、骨ではない軟産道は形を変えていきます。

しかし、なかには軟産道が非常に硬く、赤ちゃんの移動を妨げてしまう場合があります。

軟産道には子宮と腟が含まれており、それぞれが軟産道強靭の原因となりえます。

子宮は大きく分けて子宮体部と子宮頸部がありますが、多くのケースは子宮頸部によるものです。

 
●原因
大きく分けて器質的(物理的に広がりを邪魔しているものがある場合)と機能的(物理的な原因はないが広がれない場合)とに分けられます。

●器質的原因
子宮筋腫や子宮頸部の瘢痕(はんこん)などがあります。

子宮筋腫は子宮にできるコブで、これが大きい、もしくは多数あると、赤ちゃんが子宮から出てくるのを邪魔してしまいます。

子宮頸部の瘢痕は、初期の子宮頸がんなどに対して行われる子宮頸部円錐切除術の影響により、切除部分が治る過程で硬くなってしまうために起こります。

●機能的原因
子宮頸部や腟が分娩中に軟らかくならず、なかなか分娩が進まない場合に診断されます。

たとえば、高齢での初回分娩時などに起こります。通常は分娩が開始してから診断されるものですが、なかには予定日を過ぎても陣痛が来ない場合に、子宮頸部が硬いことから診断されることもあります。
 
●症状
お母さん自身の症状は特にありません。

しかし、軟産道強靭があると分娩がなかなか進まず、次第に子宮の筋肉が疲れてくることで微弱陣痛となってしまったり、その結果として遷延分娩や分娩停止となってしまったりする場合があります。

こうなると、長時間の陣痛となりお母さんも辛いですし、赤ちゃんも苦しくなってきてしまうことがあります。

もし分娩開始前に子宮頸部が非常に硬く、予定日を過ぎてしまった場合には、人工的に子宮頸部を広げる処置が必要になることがあります。
 
●検査・診断
主に内診と分娩経過による総合的な判断で軟産道強靭と診断されます。

特別な検査は必要ありませんが、子宮筋腫の場合には、事前に超音波検査で筋腫の位置や数、大きさを確認しておきます。
 
●治療
基本的に出産のゴールは赤ちゃんが無事に産まれることなので、これを目指して治療が行われます。

もし子宮筋腫が原因で分娩が全く進まない場合には、帝王切開以外に治療法はありません。

つまり、帝王切開術が必要になります。

このような帝王切開術のケースでは、子宮筋腫が邪魔になって通常よりも難しい手術になる可能性があります。

また、一般的には帝王切開術のときに子宮筋腫を同時に取ってしまうことはできません。

妊娠中の子宮は血流が多いため、子宮筋腫をとることでさらに出血が増えてしまうためです。

帝王切開術は出血量の多い手術であるため、ゆっくり丁寧に子宮筋腫を取っている時間がないからです。

子宮頸部が硬く分娩の準備が進まない場合には、人工的に子宮頸部を広げる処置を行います。

これは、子宮頸部に医療用のスポンジや水風船を入れることで、徐々に広げていくものになります。

ただし、この処置は陣痛が来る前にしか行えません。

陣痛がきて分娩が始まったのになかなか進まず、腟の軟産道強靭と考えられた場合には、子宮収縮促進剤(分娩促進剤)を点滴から投与することで陣痛を強め、どうにか軟産道が広がっていくことを期待することもあります。

腟の軟産道強靭がある場合、会陰(えいん)部分も硬くなっていることもあり、分娩時の会陰裂傷が大きくなってしまう可能性があります。会陰裂傷は分娩後すぐに縫合しますが、傷が大きい場合には時間がかかったり、痛みが強くなってしまったりする場合もあります。
 
 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.07.13更新

過強陣痛とは、陣痛が強くなりすぎた結果、胎児に過度の負担がかかってしまう状態のことを指します。

陣痛が始まることで分娩開始とみなされますが、陣痛の開始とは「子宮の収縮による規則的な腹痛が、10分以内の間隔で繰り返しおこること」と定義されています。

通常は、分娩が進行することで子宮口が徐々に開き、陣痛の感覚もだんだんと短くなっていきます。

痛みも徐々に増していき、分娩直前では陣痛が2、3分おきに来るようになります。

このような経過は一般的に認められ、正常な陣痛とみなされます。

過強陣痛は、お母さんにとって辛いのはもちろんですが、過度な子宮収縮によって胎児への血流が減少し、胎児が酸素不足となってしまう可能性があることを意味します。

 
●原因
過強陣痛となる原因として、「子宮収縮促進薬(陣痛促進剤)」の使用が挙げられます。

子宮収縮促進薬は、何らかの理由で弱まってしまった陣痛を強くしたり、そもそも自然に陣痛が来ない状態から陣痛を人工的に促進したりする際に用いられます。

現在は産科診療ガイドラインに沿って、適切な使用方法(定められた薬剤投与のペースを守ることや、持続的胎児心拍陣痛モニタリングの実施など)を守ることが強く推奨されています。

このガイドラインに沿った適切な方法で投与された場合、子宮収縮促進薬の使用によって過強陣痛のリスクはほとんど増加しないとされていますが、子宮収縮促進薬の使用時には、過強陣痛の発症に注意する必要があります。

過強陣痛の原因として子宮収縮促進薬以外のものもあります。

何らかの理由によって産道(胎児が分娩時に通過する通り道)の抵抗が大きくなりすぎる場合で、児頭骨盤不均衡、軟産道強靭、回旋異常などが挙げられます。
 
●症状
過強陣痛には、陣痛周期の短縮(頻繁に陣痛が訪れる)や持続時間の延長(陣痛のピーク時間が長くなる)、子宮内部の圧力が上昇することなどが関係します。

子宮の過度な収縮が続くことで、通常よりも陣痛による痛みが強くなり、気分不快から嘔吐してしまうこともあります。

また、子宮の筋肉が過強陣痛によって疲労し、収縮する力が落ちてしまうことで微弱陣痛となってしまうことがあります。

頻度としてはまれですが、過度な収縮に子宮の筋肉自体が耐えられなくなり、子宮の一部が裂けてしまう子宮破裂を生じることもあります。

一方で、胎児は過度の圧力によって酸素不足となり、胎児機能不全(胎児心拍数の低下として現れます)の状態になる可能性があります。
 
●検査・診断
過強陣痛を診断するために特別な検査は不要ですが、分娩中に測定している胎児心拍数陣痛図に現れる陣痛が過度に強くなります。

同時に測定している胎児心拍数のパターンを観察することで、胎児機能不全に陥っていないかをある程度判断することができます。
 
●治療
子宮収縮促進薬を使用している場合には、まず促進薬を中止することが最優先となります。

薬剤の使用をやめれば過強陣痛がおさまることも多いため、お母さんや胎児の状態に大きな問題がなければ、促進薬を使用しないで自然な陣痛のまま分娩を進めることができます。

ただ、子宮収縮促進薬を中止してもお母さんの血中には薬の成分がしばらく残ってしまうので、すぐに過強陣痛がおさまらないこともあります。

このため、胎児機能不全の状態が認められたり、お母さんの状態が悪かったりする場合には、促進薬を中止したうえで、子宮収縮抑制薬を点滴投与することもあります。

胎児機能不全が長く続いている場合、胎児心拍数の低下が持続する場合、子宮破裂を起こしている可能性が疑われる場合などより緊急の場合には、上記の対応をしたうえで、緊急帝王切開術を実施します。

特に、子宮破裂は超音波検査でも診断できないことが多く、母子ともに命の危険が心配される緊急事態です。

子宮破裂を治療するには開腹手術が必須のため、帝王切開術で赤ちゃんを取り出したあと、そのまま子宮破裂の部位を特定し、修復手術を行うことになります。

破裂部位の損傷が非常に大きい場合、修復困難なこともあり、最終的に子宮摘出術が必要となるケースもあります。
 
 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.06.23更新


 
産褥感染症とは、産褥期(さんじょくき)に発生する感染症のことを指します。

産褥とは、出産後にお母さんの身体が徐々に非妊娠時の状態に戻る時期のことを指します。

産褥感染症は生まれた赤ちゃんではなく、あくまでもお母さん自身におこる感染症に限られます。

出産の影響で起こりえる感染症という意味もあるため、感染が起こる場所は、主に子宮、尿路(尿道、膀胱、腎臓など)、乳房となります。

産後に引いた風邪や、胃腸炎などは産褥感染症に含まれません。
 
 
●原因
出産では、子宮の内面に傷がたくさんできます。

また、普段はほとんど閉じている子宮口(子宮の入り口)がしばらく開いたままになるため、産褥期には子宮内や子宮の周囲に感染が生じやすくなります。

特に、以下のようなケースでは産褥感染症が起こる可能性が高くなります。

前期破水などで破水から長時間経過した場合
胎盤を出すときに用手剥離(自然に剥がれない胎盤を医師が手で剥がし出す処置)が行われた場合
分娩前から子宮内感染が起きていた場合 など
尿道口の付近にも悪露(おろ)(産褥期に排出される分泌物)の溜まりや、そこに増殖してしまった細菌などが侵入しやすく、尿路感染のリスクが高い状況でもあります。
乳房での感染症は主に乳腺炎と呼ばれますが、これは乳腺の通りが悪い部分に乳汁が溜まってしまい、そこに細菌が侵入することで発生します。

細菌が増殖して膿が溜まってしまうような乳腺炎を化膿性乳腺炎と呼びます。
 
●症状
子宮内感染が起こると、下腹部痛、発熱、悪臭のある悪露などがみられます。

尿路感染には尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎などが含まれます。

残尿感や頻尿・排尿時痛がみられますが、腎盂腎炎まで至ってしまうと高熱が出て、腰のあたりに強い痛みが出ることもあります。

乳腺炎は、乳汁の流れが悪くなり、一部に溜まってしまうと、乳房が赤く腫れる、熱感がある、強い痛みが現れるなどの症状が出ます。

発熱を伴うこともありますが39度以上まで上がることは少ないです。

化膿性乳腺炎まで進んでしまうと、症状が強くなり、全身のだるさや高熱が出ることも多くなります。
 
 
●検査・診断
それぞれの疾患によって必要な検査法は異なります。

子宮内や子宮周囲(卵巣、卵管など)の感染では、内診、超音波検査が行われます。

内診時に子宮のあたりを押されたり動かされたりすれると強い痛みを感じる、また悪露の臭いや色が診断の参考になります。

子宮内感染が疑われた場合には、悪露の細菌培養検査や全身状態によっては血液検査も加えられることがあります。

尿路感染では、まず問診が重要になります。

さらに、腎盂腎炎に進行していないか身体診察で調べ、尿検査も行われます。

尿路感染でも、腎盂腎炎など重症の場合には、血液検査が追加されます。

乳腺炎も、まずは身体診察が重要です。

ほとんどの場合では乳房の診察だけで診断可能ですが、乳腺炎のなかでも重症な場合(化膿性乳腺炎や乳腺膿瘍など)では、膿汁の細菌培養検査や、血液検査が行われることもあります。
 
 
●治療
それぞれの疾患によって対応が変わりますが、感染症という点はいずれも共通しているため、抗生剤の投与が基本的な治療となります。

抗生剤は内服薬と点滴注射の場合がありますが、重症例でなければ通常は内服薬での投与となります。

子宮内や子宮周囲(卵巣、卵管など)の感染では、もともと抗生剤の効果が届きにくいという特徴があるため、内服薬がなかなか有効でない場合など、点滴投与が選択されることも少なくありません。

尿路感染では、抗生剤の投与以外に、排尿を促して病原菌を体外に洗い出すということも重要になります。

そのため、水分を普段以上にしっかり摂取し、排尿を促すように意識します。

乳腺炎では、抗生剤が使用される頻度は少ないです。

これは、多くの場合では細菌感染の影響より、乳腺の詰まり自体による影響が大きいためで、適切な乳房マッサージによる乳腺の開通と乳汁の排出を促すことが重要になります。

自身で適切な乳房マッサージを行うことは難しいため、症状が出て辛いなと感じてきたら、早めに医療機関を受診するなどして専門家による指導を受けましょう。

化膿性乳腺炎や乳腺膿瘍では抗生剤の投与や排膿処置などの治療が必要となることも多いです。
 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.06.15更新


 
子宮内に複数の胎児が存在する状態をいいます。

子宮内に2人いる場合を「双胎(そうたい)」、3人いる場合を「三胎(品胎)」、4人いる場合を「四胎(要胎)」といいます。

多胎妊娠は早産になりやすく、合併症を発症する可能性も単胎に比べ高くなります。

三胎、四胎は非常にまれであるため、今回は双胎妊娠を中心にご説明します。

双胎妊娠の場合、「一卵性」「二卵性」といった表現をよく耳にするかもしれませんが、産婦人科ではそのような表現は使用しません。

分類は胎盤(絨毛膜)の数と赤ちゃんが入る膜(羊膜)の数とで行い、下記のような分類となります。

一絨毛膜一羊膜
一絨毛膜二羊膜
二絨毛膜二羊膜
「絨毛膜」の数は、「胎盤」の数を示し、「羊膜」は子宮の中の「膜」の数と考えていただければと思います。

ですから、「一絨毛膜二羊膜」双胎の場合には、胎児は羊膜によって2つの空間に分かれていますが、一つの胎盤を二人で分け合っていることになります。

合併症のリスクは、合併症のタイプが異なるため断定はできませんが、一般的に「一絨毛膜一羊膜」>「一絨毛膜二羊膜」>「二絨毛膜二羊膜」となります。

●合併症
母体に起こる合併症
子宮が過度に大きくなることによって子宮収縮が起こりやすく、「流産/早産」、またその手前の「切迫流産/切迫早産」になりやすくなります。

産褥期(さんじょくき)(産後、女性の体が妊娠前の状態に戻っていくための時期)には子宮が元に戻ろうとする力が弱いために出血が起こりやすくなります(弛緩出血、子宮復古不全)。

多胎妊娠すると出産時の出血に備えて母体の血液量が増えます。

双胎妊娠は単胎妊娠よりも貧血になりやすいです。

また、多胎では循環や腎臓機能へ負担がよりかかりやすく、妊娠高血圧症候群、HELLP(ヘルプ)症候群などの合併症になりやすいです。

●胎児に起こる合併症
胎児発育遅延(FGR)を起こしやすいため、超音波検査で胎児の発育をフォローしていきます。

一絨毛膜二羊膜や一絨毛膜一羊膜双胎に起こる合併症として「双胎間輸血症候群(TTTS)」があります。

これは、2人の赤ちゃんが1つの胎盤を共有しており、臍帯(さいたい)に向かっている血管が吻合している(つながっている)ことでおきます。

この吻合血管によって両児の間の血液量が不均等になります。

双胎間輸血症候群が発症すると、多くの血液を供給される児では、血液がどんどん流れ込んできてしまいます。

その結果、尿量産生が亢進し、胎児の周りのスペースが広く(羊水過多)なったり、心臓への負担から心不全を発症し体中がむくむ(胎児水腫)に至る症例もあります。

供給するほうの児は、胎児発育遅延(FGR)になったり、尿量減少によって胎児の周りのスペースがほとんどない状態(羊水過少)になったりします。

治療方法は、吻合血管をレーザー(FLP)により、両児間を行き来する血流を遮断する胎内治療や、早期娩出(人工的に早産で生む)を行うことで胎盤を分離する方法があります。

胎児治療は母体への影響を考慮し、厳格な基準を満たした症例に限り行われます。
 
○検査・診断
妊娠週数が進むと多胎妊娠の分類確定の診断が難しくなるため、妊娠10週頃までにどれに当てはまるのかを超音波検査で診断しておく必要があります。

ですから、市販の妊娠反応尿検査で妊娠が分かったら、早めに産科を受診するようにお願いします。

妊婦健診中の検査は単胎妊娠の場合と変わりありませんが、上に述べたような合併症がおきていないかどうかを注意してみて行く必要があります。
 

●治療
単胎妊娠よりも合併症がおきやすいため、注意して経過を観察して行くことが大切です。

また、多胎妊娠の場合早産になる確率が高いです。したがって、施設によっては三胎妊娠なら妊娠28週頃、双胎妊娠であれば妊娠32週頃に管理入院とすることもあります。

多胎では単胎と比較してリスクが高いため、施設が分娩や管理を受け入れてくれるかはじめに確認が必要です。

分娩方法は多くの施設で帝王切開となりますが、双胎妊娠で胎位(赤ちゃんの向き)やNICU併設など施設の条件を満たせば、経腟分娩を許可することもあります。

前述した一絨毛膜二羊膜双胎が妊娠16週〜26週の間にTTTS(双胎間輸血症候郡)を発生した場合には、胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)を行います。

これは、TTTSの原因と考えられる両児間で合わさった胎盤血管を遮断する手術で、両児間の血流不均等をなくす根治療法です。

母体の腹壁に小さな皮膚切開を加え、多くの血液を供給される児の羊水腔に針(トロッカー)を挿入します。

トロッカーより胎児鏡を挿入し、胎盤表面の吻合(合わさった)血管をすべてさがし、胎児鏡より挿入した医用レーザーで吻合血管を焼き切ります。

すべての吻合血管を焼き切った後に羊水を除去して終了となります。

また、分娩後も2人を同時に育児していかなければならないため、母親の負担は大きくなります。

夫を始めとする周囲のサポートを得るために妊娠中から、準備しておきましょう!


 

投稿者: 高橋整骨院

2020.06.05更新

出産に際して胎児が過度なストレスにさらされると、胎便(赤ちゃんの便のこと)が排泄され、羊水が汚染されることがあります。

出産前後、胎便に汚染された羊水が気道内に入り込むことから呼吸障害が引き起こされることがあります。

この状態のことを胎便吸引症候群と呼びます。

気道に吸引された胎便は続発性に肺炎を引き起こすこともあり、より呼吸状態を悪化させることになります。

出生予定日を超えた過期産の赤ちゃんに発症する可能性が高くなることが知られています。

 

●胎便吸引症候群とはどのような病気?

原因
出産前後は、赤ちゃんが低酸素状況に陥りやすい時期です。

低酸素を引き起こす原因には、臍帯(さいたい)が圧迫され、赤ちゃんへの血流が一過性に低下することや、母親が何かしらの感染症を発症していることが原因となることもあります。

予定日を超えると胎盤の余力も低下しており、より低酸素のリスクは高まります。

こうしたストレス状況下においては、赤ちゃんは子宮内で胎便を排泄するようになります。

さらに、低酸素状況に対して、赤ちゃんは羊水の中にいるにもかかわらず呼吸をしようという反応を示します。

呼吸時に赤ちゃんが羊水中に混入した胎便を吸引することから、胎便吸引症候群は発症します。

胎便が気道内に吸引されると物理的に空気の通り道が遮られます。

また、胎便そのものが肺に炎症を引き起こし、肺炎が発症します。

また肺には、サーファクタントと呼ばれる呼吸に際して重要な物質が存在していますが、胎便の影響でサーファクタントが壊れてしまいます。

以上のような要因が関連して、胎便吸引症候群では呼吸障害が発生します。
 
症状
胎便吸引症候群では、出生直後から呼吸障害を認めます。

具体的には、多呼吸やうなり声、鼻を広げる尾翼呼吸、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間がへこむ陥没呼吸、あえぎ呼吸、チアノーゼなどです。

また、へその緒や顔面、体の表面には緑色の胎便を認めることがあります。

呼吸の状態が悪い場合には、気管にチューブを入れ人工呼吸管理になることもあります。

その際、気管の中から胎便の排泄を認めることもあります。

胎便吸引症候群では、緊張性気胸と呼ばれる非常に重い合併症を併発することもあります。
 
検査・診断
胎便吸引症候群の診断や重症度の判定には、胸部レントゲン写真、血液ガス検査が行われます。

胸部レントゲン写真
胎便吸引症候群では、胎便が吸引された部分に関連して肺胞がつぶれます(肺胞虚脱)。

肺胞虚脱を起こした部位は、レントゲン写真で白く撮影されます。

また、胎便吸引症候群では、肺胞虚脱とは逆に過剰に空気が入り込んでいる肺胞を認めることがあります(肺気腫)。

肺気腫の部位は、レントゲン写真では黒色が強く観察されます。

胎便吸引症候群では、白い部分と黒い部分が混在することが特徴的です。

胎便吸引症候群に続発して気胸をみることもありますが、これも胸部レントゲン写真にて診断をされます。

血液ガス検査
胎便吸引症候群では、肺組織における正常な呼吸が行うことができなくなります。

そのため、血液ガス検査を行うと血液中の酸素が足りていない状態や、二酸化炭素がうまく体外に排泄できていない状態を観察することがあります。

これに伴い、血液のpHが正常よりも酸性に傾くアシドーシスと呼ばれる状態になります。

また、新生児遷延性肺高血圧症と呼ばれる、特殊な血行動態を示すこともあります。

胎児では肺への血流が乏しいことが正常な姿であり、出生後、肺の血圧が下がるにつれて肺への血流も増加します。

しかし、胎便吸引症候群では、肺高血圧が出生後も持続することがあり、このことを新生児遷延性肺高血圧症と呼びます。

新生児遷延性肺高血圧症では、心エコーを行い肺の状態を確認します。
 
治療
胎便吸引症候群は、羊水の混濁(こんだく)により疑われます。

赤ちゃんが出生したあとには、第一啼泣(だいいちていきゅう)(産声)を認める前にできる限り素早く口腔内の胎便を吸引することが大切です。

その後の胎便吸引症候群の治療は、呼吸状態の重症度や気胸、新生児遷延性肺高血圧症の合併などに応じて決定されます。

重症な胎便吸引症候群では、人工呼吸管理が行われます。

肺を正常な構造に保つサーファクタントが欠乏していることもあるため、サーファクタントを気管に投与することもあります。

また、気管内の胎便を洗浄することもあります。

人工呼吸管理では、筋弛緩薬(きんしかんやく)や鎮静剤を用いることもあります。

また、充分な酸素投与も行われます。

胎便吸引症候群に続発して細菌感染が生じることもあるため、抗生物質が投与されることもあります。

緊張性気胸の発生が疑われる場合には、胸部に貯留した不要な空気を脱気させるために針を胸に刺す治療がとられることがあります。

新生児遷延性肺高血圧症の治療では、点滴による肺血管拡張薬や一酸化窒素(NO)と呼ばれる吸入ガスを使用することがあります。

重症な新生児遷延性肺高血圧症では、膜型人工肺療法(ECMO)と呼ばれる治療方法がとられます。

胎便吸引症候群では、新生児仮死の状態で産まれてくることもあり、脳の保護を目的とした治療がなされることもあります。

この目的のために、脳低体温療法が行われることもあります。
 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.06.02更新

異所性妊娠(子宮外妊娠)」いう疾患名から、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。

医療現場では「若い女性の腹痛はまずは異所性妊娠(子宮外妊娠)を疑え」と言われ続けているほど重要な疾患です。

これは早期発見すれば治療が可能である反面、診断を逃すと命を落としかねない疾患だからです。

 

 

●異所性妊娠(子宮外妊娠)とは
正常の妊娠では、卵子は卵管→子宮→子宮内膜へと移動して子宮内膜に着床します。

しかし、稀にそこまでたどり着かない場合や行き過ぎてしまう場合があり、受精卵が子宮内膜以外の部分に着床し、発育してしまいます。かつてはこれを子宮外妊娠と呼んでいましたが、現在では「異所性妊娠」が正式な名称となっています。


 

●クラミジアが原因となることも多い
異所性妊娠は、意外にも全妊娠の約1%を占めており、決して珍しい病気ではありません。

そのうえ、異所性妊娠は近年増加傾向にあります。

この原因はクラミジア感染であるといわれています。

クラミジアに感染すると卵管が痛み、異所性妊娠が起こりやすくなるのです。

従来は異所性妊娠を早期に診断することは難しく、その結果破裂し腹腔内に大出血することで生命に影響する病気でした。

しかし現在では妊娠反応や超音波検査が発達し、診断方法が進歩しました。

そのため、症状が出る前の早期に診断できることも多くなり、従来に比べて危険度が下がりました。

異所性妊娠は、受精卵の着床部位によって「卵管妊娠」「腹膜妊娠」「卵巣妊娠」「頚管妊娠」の4つに分けられます。

このうち98%を占めるのが卵管妊娠です。

 

●異所性妊娠の典型的なケース
典型的なケースとしては、妊娠可能年齢の女性が無月経、少量の性器出血、下腹部痛などを訴え、受診します。

そこで妊娠反応検査を行ったところ妊娠が確認され、経膣超音波検査が行われます。

このとき胎嚢(GS)が子宮内部に認められず、子宮体部以外の領域に胎嚢が認められることがあるのです。

 

異所性妊娠の診断のポイント
まず、妊娠初期には正常妊娠でも子宮内に胎嚢が認められない時期があるので、胎嚢がないからただちに異所性妊娠と診断することはできないということです。

加えて初期の流産の場合も、妊娠反応が陽性であるにもかかわらず胎嚢がみえないことがあります。

 

異所性妊娠の治療
異所性妊娠の治療方針は、全身状態、着床部位、次回妊娠でのお子さんを望むかどうかを考えあわせ、総合的に決定します。

●待機療法:全身状態が安定し、hCG値(妊娠したときのみ分泌される特殊なホルモンの値)が減少傾向を示す一部の症例のみ

●薬物療法:メトトレキサート全身または局所投与など

●手術療法:卵管線状切開術、卵管切除術、単純子宮全摘術(頸管妊娠の場合)など

手術においては、以前は開腹手術がおこなわれていましたが、最近は腹腔鏡下に行われることが多くなりました。

手術をする場合には、卵管の切開もしくは切除を行います。

 

●卵管の手術について
異所性妊娠は卵管で発生することが多く、これを卵管妊娠といいます。

卵管妊娠は胎児が生存し胎嚢が発育していることを指します。

これに対し、卵管妊娠流産というケースもあります。

卵管妊娠流産で多いのは、比較的初期に胎児が死亡し、流産が卵管内でおこるケースです。

卵管妊娠流産は卵管妊娠に比べて腹痛や出血などの症状が軽く、手術をせず経過をみることもありますが、手術をする場合は卵管を温存することが主流です。

卵管妊娠の手術では、従来は卵管を切り取っていました。

しかし早期発見された場合や卵管妊娠流産の場合は、卵管を切り取らずに温存する手術もできるようになってきていますので、将来子供が欲しい人には朗報といえるでしょう。

一方、卵管妊娠で胎児が発育し胎嚢が大きくなると、卵管が破裂し、お腹の中に大出血を起こすことがあります。

かつては異所性妊娠の多くは卵管破裂による救急疾患でしたが、現代では妊娠反応と超音波検査で早期に発見し卵管破裂に至らず治療をすることができるようになってきています。

 


 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.05.28更新

●子供が生活習慣病にかかる危険性

日本の若い女性に増える「やせ」問題と、低出生体重児など小さく生まれた赤ちゃんが生活習慣病にかかりやすいと言われる理由について書いていきます。

 

お母さんが妊娠糖尿病であったり肥満である場合には、赤ちゃんに栄養が供給され過ぎる「胎児の過栄養問題」が生じやすくなります。

しかし、これとは逆にお母さんがやせており胎児が「低栄養状態」で育ってしまうこともまた、生まれたお子さんが将来生活習慣病にかかるリスクを高める可能性があります。

これは、今の日本の社会では見過ごすことのできない問題といえるでしょう。

なぜなら、日本における妊娠可年齢の女性はやせ志向が強く、実際に20代ではおよそ4人に1人が「やせ」とデータでも示されています。

 

●やせ妊娠の合併症ー小さな赤ちゃんが生まれやすい

やせ妊娠の合併症には、切迫早産・低出体重児(出生体重が2500g未満)などあります。

赤ちゃんが低体重児など比較的小さく生まれてくる理由は、お母さんから届く栄養が少なく、成長因子であるインスリン分泌が十分になされなかったためと考えられます。

お腹の中の赤ちゃんは、栄養が十分に届かないという環境に適応しようとしますから「なるべくエネルギー消費を抑え、脂肪としてため込もうとする体質へ」と育っていきます。これは、インスリン分泌が少なくインスリン抵抗性が強いという体質になりやすくなるということです。

しかし、エネルギーや糖をため込む体質を持った赤ちゃんが生まれてくる環境は、「飽食の時」と呼ばれる現代の日本です。

赤ちゃんが小さく生まれてきた時、お母さんはミルクをたくさん与えようとしますが、これは子供が太りやすくなってしまったり糖代謝異常を起こしやすくなることに繋がります。

 

●胎児期の低栄養問題と減少する平均出生体重

かつて日本では、「小さく生んで大きく育てよう」という言葉が使われていましたが、これは将来のメタボリックシンドローム発症への危険性を上げる危険な行為と考えられます。

出生体重が小さく、また小児期の体重増加が大きいほど肥満や2型糖尿病・高脂血症・高血圧などの生活習慣病の発症率が高くなると明示されています。

 

今の日本では、赤ちゃんの平均出生体重が右肩下がりに減っています。

かつては3200gほどであった平均出生体重は、今では3000gを切るまでに下がりました。

2500g未満の低体重児はおよそ10人に1人の割合で見受けられます。

早産ではない、正期産のお産(37週~41週6日の間のお産)で赤ちゃんが小さく生まれる原因としては、やせ・妊娠高血圧症候群・喫煙妊婦などがあげられます。

したがって、低出生体重を予防するには喫煙や食生活の改善が必要になります。

 

 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.05.27更新

羊水は、妊娠早期から存在し、妊娠後半期になると胎児の尿がその主成分になります。

また、胎児が羊水中に排尿し、それを嚥下(飲み込む)することで量が調節されています。

そのため、羊水の量は胎児や母体の状態を反映する重要な指標になると考えられています。

羊水量は妊娠の進行とともに増加して妊娠32週前後でピークになり、その後は徐々に減少していきます。

生理的な羊水量の範囲を大きく超える場合を羊水過多、これにより子宮が大きくなって圧迫感や子宮収縮、子宮頸管長の短縮などの症状が出現している状態を羊水過多症と呼んでいます。

羊水過多は、全妊娠の約1~2%に合併するといわれています。

 
●原因
羊水過多の原因には、大きく分けて胎児側に異常がある場合(胎児因子)と、母体側に異常がある場合(母体因子)の2種類があります。

「胎児因子による羊水過多」
羊水は、胎児により尿として産生され、嚥下されているという生理的な背景から、1) 産生量が多くなる場合、2) 嚥下がうまくできていない場合の二つに分けられます。

1) 産生量が多くなる場合
胎児の心拍出量や腎血流量が増加するときに多くなると考えられています。

たとえば、血液型不適合妊娠や母体パルボウィルス感染で胎児貧血が起こっているとき、組織の酸素化を維持するために心拍出量が増加し、その結果羊水も増加します。

2) 嚥下がうまくできていない場合
飲み込む力そのものが弱くなる場合と、嚥下しても上部消化管が閉鎖しているために吸収されない場合とがあります。

上部消化管が閉鎖する疾患としては食道閉鎖や十二指腸閉鎖、飲み込む力が弱くなる疾患には染色体異常、神経疾患、筋疾患などが当てはまります。

「母体因子による羊水過多」
母体因子として最も重要なものは、糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病です。

コントロール不良の糖尿病があると、母体だけでなく胎児も高血糖となります。

その結果胎児の尿産生量が増加し、羊水過多になると考えられています。
 
●症状
羊水が多いだけで何の症状もない方もいますが、お腹が張る、苦しくて食事が摂れない、吐いてしまう、横になれない、尿が近い、尿が漏れるなどの症状が出ることがあります。

また、自覚症状が乏しくても、内診すると子宮口が開きかかっていたり、子宮頸管長が短縮していたりします。

先述のとおり、いわゆる羊水過多症です。

●検査・診断
妊娠中に羊水量を直接調べることはできません。

そのため、超音波検査により羊水量を推測し、診断します。

超音波検査では、羊水ポケットや羊水指数(AFI)を調べることが一般的に行われています。

●羊水ポケット
超音波プローブを子宮に垂直に置いて、子宮内側と胎児との間に接するように描いた円の直径を羊水ポケットと呼んでいます。

2cm以上8cm未満が正常範囲で、2cm未満を羊水過少、8cm以上を羊水過多と診断します。

●羊水指数(AFI)
子宮を正中線と臍(へそ)の高さで上下左右に4分割し、それぞれの領域の最大羊水深度の合計を〇〇cmで表した指標です。

5以上25未満が正常範囲です。

羊水過多と診断された場合、その原因検索を行います。

原因となりうる疾患を念頭に置いて、胎児スクリーニングや母体の糖代謝異常の検査を行います。
 
●治療
羊水過多があることにより、自覚症状・他覚症状が出現している場合、治療を行います。症状が軽度であれば、まずは切迫早産の治療に準じた保存的な治療を試みます。

入院による安静、子宮収縮抑制薬の投与などがこれにあたります。

子宮がとても大きくなって圧迫感や呼吸困難感が出現するような場合には、羊水除去を行う場合もあります。

太めの針で子宮を刺し、30分程度の時間をかけて1~1.5リットル程度の羊水を除去します。

まれに破水や子宮内感染、胎盤早期剥離(はくり)などの合併症が出現するため、注意が必要です。

糖尿病によるものや特発性のものでは、羊水除去を必要とするような高度な羊水過多になることは滅多にありません。
 
 

 

投稿者: 高橋整骨院

2020.05.26更新

子宮内膜は子宮の中の腔(空間)を覆っており、月経周期に伴って分厚く増殖し、月経の際に剥がれ落ちるというサイクルを繰り返しています。

子宮内膜増殖症とは、子宮内膜が異常に厚く増殖した状態を指します。

場合により子宮体がんの発生原因となったり、あるいは子宮体がんが隠れていたりする場合もあり、注意が必要な疾患です。

 
●原因
子宮内膜の変化には女性ホルモンが関与していますが、子宮内膜の増殖作用があるエストロゲンがさまざまな要因により過剰な状態になることで生じます。

エストロゲンが過剰な状態となる原因としては無排卵、エストロゲンを主成分とするホルモン剤を内服している場合、月経周期の後半で作用するプロゲステロン(排卵後に作用する女性ホルモン)の分泌が少ない状態 (黄体機能不全)、多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群などが挙げられます。

また、肥満や高血圧、糖尿病なども子宮内膜増殖症になるリスクが高いとされています。

さらに子宮内膜の過剰な増殖状態が続くことで、内膜を構成する細胞の遺伝子に傷が蓄積し、正常でない状態 (異型細胞と呼ばれます)となることが知られており、異型細胞が増殖を繰り返すことで子宮体がんの発生母地(前がん病変)となる場合があります。

子宮内膜増殖症は子宮内膜を構成する細胞の異型の有無に応じて2つに分類され、細胞に異型のない場合は「子宮内膜増殖症」、細胞に異型がある場合は「子宮内膜異型増殖症」と呼びます。

「子宮内膜増殖症」は、癌化率が2%程度と低いですが、「子宮内膜異型増殖症」は癌化率が20%程度と高いことが知られています。
 
●症状
最も多い症状は不正性器出血で、月経でないのに出血がある状態を指します。

その他、月経時に増殖し厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちることによって、通常より月経量が増え(過多月経)、これにより貧血や動悸(どうき)などの症状がみられることがあります。
 
●検査・診断
不正性器出血などの症状がみられた場合、下記のような検査が行われます。

・問診
・内診
・超音波検査
・画像検査 (MRIやCT検査など)
・病理検査 (細胞診や組織診)
・血液検査
・内診
・内診によりおりものの性状、出血の程度、出血が子宮から出ているかどうかを確認します。

また、子宮、卵巣の形や大きさなどについても評価します。

●超音波検査
超音波が出る棒状の器具を腟から挿入し子宮内膜の厚さや状態を確認します。

●病理検査 (細胞診、組織診)
細胞診は専用のブラシやチューブのような器具を腟から入れて子宮の奥にある細胞を採取し顕微鏡で調べます。

また組織診は子宮内の組織の一部を器具で引っ掻いたり吸引したりして採取した組織を顕微鏡で調べます。

どちらの検査も痛みや出血を伴うことがあります。

これらの検査により子宮内膜の増殖が確認されると診断が確定します。

●画像検査
子宮や卵巣の状態によっては超音波検査に加えて、子宮や卵巣の状態をさらに評価するため、MRIやCTによる画像評価を行う場合があります。

●血液検査
月経時の出血が多い場合や動悸などの症状がある場合には貧血がないか血液検査を行う場合があります。

またホルモン量の評価も行う場合があります。
 
●治療
治療は細胞の異型の有無(「子宮内膜増殖症」か「子宮内膜異型増殖症」か)に応じて大きく異なります。

その上で年齢や妊娠・出産の希望の有無を加味して個別に検討がなされます。

●「子宮内膜増殖症」の場合
細胞の異型がない子宮内膜増殖症は60%以上が自然に治るため、治療を行わずに経過観察することが一般的です。

定期的に外来で診察を行い、超音波検査や病理検査(細胞診、または組織診)により子宮内膜増殖症の経過を評価していきます。

性器出血が持続する場合やそれによる貧血が強い場合などにホルモン剤を用いた治療が行われることもあります。

●「子宮内膜異型増殖症」の場合
まずは子宮体がんがないか調べることが重要です。

このために麻酔を行なった上で子宮内膜全体を削り取る「子宮内膜全面掻爬(そうは)」と呼ばれる処置を行います。

病理検査で子宮体がんがないことを確認した上で子宮内膜異型増殖症の治療へ進みます。

子宮内膜異型増殖症の治療では、子宮を取り除く手術 (子宮全摘出術)を行うのが一般的です。

ただし妊娠の希望がある場合には、状況に応じて子宮を摘出せずに高用量の黄体ホルモン剤 (メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA))の投与を行う場合や、検査と治療を兼ねて定期的に子宮内膜全面掻爬を行う場合があります。
 

投稿者: 高橋整骨院

2020.05.22更新


黄体嚢胞とは、排卵の際に形成される黄体(おうたい)の中に透明な液体が溜まってしまい、風船のように腫れてしまう状態を指します。

黄体は、排卵によって卵子が卵巣から放出される際に、卵巣内に一時的に形成される黄色っぽいホルモン分泌組織です。

ホルモンとしてプロゲステロンとエストロゲンを分泌します。

通常の月経周期において黄体は、妊娠成立しなければ自然退縮し、ホルモン分泌が低下して、ついには子宮内膜がはがれる現象を引き起こします。

これが月経です。

一方、妊娠した場合には、妊娠黄体となり、プロゲステロンとエストロゲンの分泌が続きます。

妊娠初期にはこれらステロイドホルモンを分泌することで、胎盤(たいばん)が完成するまでの間、流産することなく胎児が成長するよう守っています。

このとき、妊娠によって母体内で増加した妊娠性ホルモン(hCG)が黄体を刺激してしまうと、黄体嚢胞が起こります。

妊娠初期に黄体嚢胞ができる場合、排卵した側の卵巣に発生するので、左右どちらかであることがほとんどです。

黄体嚢胞自体は、一時的なもので基本的に害はありません。

ところが、溜まった液体による重さで黄体嚢胞が入っている卵巣が捻れてしまったり、膨らんだ部分が破れてしまったりする可能性もあるため、注意が必要です。
 
●原因
黄体嚢胞は、妊娠に伴い増加した妊娠性ホルモン(hCG)が、黄体を過剰に刺激することが原因と考えられています。

しかし、なぜ過剰に刺激されてしまうのか、過剰に刺激されることでなぜ液体が溜まってしまうのか、などの具体的なメカニズムははっきりとわかっていません。

また、通常は妊娠初期の女性に比較的よく見られるものですが、まれに絨毛性(じゅうもうせい)疾患の方にも見られます。
 
●症状
黄体嚢胞ができただけでは、自覚症状はほとんどありません。

ただし、腫れた重みによって卵巣が捻れてしまうと、激しい痛みが現れます。

これは、捻れることによる血流の悪化と、捻れることによる組織の牽引(引っ張られること)によって起こるものです。

腫れた側の卵巣が捻れるため、通常は左右どちらかの下腹部に痛みを感じます。

強い痛みのため、同時に吐き気や嘔吐が現れることもあります。

また、まれですが、腫れた黄体嚢胞が破裂してしまうこともあります。

捻れたときのような激しい痛みは出にくいのですが、もともと水風船のような状態の黄体嚢胞が破れるため、お腹の中で少量の出血があり、漏れた液体による刺激で軽度の痛みが現れることもあります。
 
●検査・診断
通常は内診と超音波検査でほぼ確実にみつけられます。

ただし、妊娠初期に卵巣の腫れが見つかった場合、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)という別の疾患である可能性も考えなければなりません。はじめて見つかった場合には、黄体嚢胞と卵巣嚢腫(腫瘍)の判別が難しいことが多いため、少し時間をおきながら数回の検査で判断していきます。

黄体嚢胞であれば一時的な腫れなので数週間後に小さくなったり消えたりすることがほとんどですが、卵巣嚢腫(腫瘍)ではそのようなことはありません。
 
●治療
黄体嚢胞は、基本的には自然に消えていくものなので、必ず治療が必要なわけではありません。

卵巣嚢腫(腫瘍)ではなく黄体嚢胞だと判断できれば、経過観察でよいと考えられています。

ただし、卵巣が捻れる、もしくは破裂していることを疑う症状がある場合や、それらが明らかに判断できる場合には治療が必要になります。

具体的には、完全に捻れてしまった場合は手術療法が必要になります。

破裂の場合には、必ずしも手術が必要なわけではなく、お腹の中での出血や痛みがごく軽度であれば、入院または外来での経過観察が可能です。

また、腫れた原因が卵巣嚢腫(腫瘍)である場合には対応が異なります。
 
 

 

投稿者: 高橋整骨院

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